SSH iNPHSaiseikai Shiga Hospital inph Center
水頭症センター

 

水頭症について

水頭症とは、脳や脊髄の表面を流れる“脳脊髄液”の循環や吸収に異常が生じ、脳脊髄液を産生する場である“脳室”が拡大する病気のことです。

 

脳は頭蓋骨に覆われていますが、外部からの衝撃が直接加わるのを避けるため、脳脊髄液と呼ばれる液体に浮かんだ状態で存在しています。脳脊髄液は、脳の中にある脳室と呼ばれる空間で産生され、脳や脊髄の表面に排出されると、循環しながら毛細血管やリンパシステムに吸収されていくと考えられています。通常、成人では約150ml、小児では約100mlの脳脊髄液が循環していますが、脳室では1日に約500mlもの脳脊髄液が産生され、常に入れ替わっていると言われています。

 

水頭症は、脳室内での脳脊髄液の流れが悪くなることによる“非交通性水頭症”、脳室を出た後に脳脊髄液の循環や吸収に異常が生じることによる“交通性水頭症”に大きく分けられ、それぞれ原因や現れる症状、治療方法が異なります。

 

当センターで主に取り扱う症状は、交通性水頭症の中の一つである「特発性正常圧水頭症(iNPH)」です。

 

特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第3版より

 

 

特発性正常圧水頭症(iNPH)

正常圧水頭症は、歩行障害、認知障害、排尿障害の3つの症状を特徴とする疾患です。脳の中にある脳室と呼ばれる空間には脳脊髄液が存在していますが、水頭症は、その脳脊髄液が異常に留まることで脳室が拡大し、脳を圧迫することで障害をきたすと言われています。正常圧水頭症には、くも膜下出血や髄膜炎などの後に続発する続発性正常圧水頭症と、原因の明らかでない特発性正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus:iNPH)に分けられます。

 

iNPHは、近年治療可能な認知症(treatable dementia)の1つとして知られています。65歳代以上に好発し、日本の高齢者人口の1.1%(約37万人)方が罹患していると推定されています。

 

iNPHの3徴候

歩行障害、認知障害、排尿障害の3つの症状が特徴です。ただ3つの症状が全てみられるのは60%程度で、1つでも症状がある場合は、本疾患を疑う必要があります。

これらの症状は、パーキンソン病やアルツハイマー病でもみられる症状でもあるので、診断されず見逃されていることがあります。

 

①歩行障害

ひざを上げづらい、すり足になる、歩幅が小刻みになるなど、歩行が不安定になります。また、ひざが外に開いた状態で(ガニ股のように)歩くことも特徴です。特に曲がったり、Uターンするときによろめきが強く、転倒することがあります。障害が強くなると、一歩目が出ずに歩き始められなくなったり、起立の状態を保持できなくなります。歩行障害が初期症状として現れることが多いとされており、3徴候のうち、治療でもっとも改善が得られる症状でもあります。

特徴
  • 小刻み歩行(小股でよちよち歩く)
  • 開脚歩行(少し足が開き気味で歩く)
  • すり足歩行(足が上がらない状態)
  • 不安定な歩行(特に転回のとき)
  • 転倒する
  • 第一歩が出ない(歩きだせない)
  • 突進現象(うまく止まることができない)

②認知症

自発性がなく、思考や行動面での緩慢さが目立ちます。一日中ぼーっとし、日課としていた趣味や散歩などをしなくなるといったことが起こり、物事への興味や集中力をなくし、物忘れも次第に強くなります。怒りっぽくなることが多く、アルツハイマー病とは症状が異なります。

特徴
  • 集中力、意欲・自発性が低下(趣味などをしなくなる、呼びかけに対して反応が悪くなる、一日中ボーっとしている)
  • 物忘れが次第に強くなる

③排尿障害

トイレが非常に近くなったり、我慢できる時間が短くなったりします。歩行障害もあるために間に合わなくて失禁してしまうこともあります。

特徴
  • 尿失禁
  • 頻尿(トイレが非常に近くなります)
  • 尿意切迫(我慢できるの時間が非常に短くなります)
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