iNPHの診断は、基本的に症状と画像診断および比較的簡単な検査を通して行われます。
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iNPHの3徴候の重症度をiNPHグレーディングスケールを使用して評価します。このスコアは治療が施された後にも、症状の改善度合いを確かめるために用います。
※日本正常圧水頭症研究会ガイドライン作成委員会によって2004年に作成。
何らかの歩行障害があるか、どの程度の歩行障害か
0 | 正常 |
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1 | ふらつき・歩行障害の自覚のみ |
2 | 歩行障害を認めるが補助器具(杖・手すり・歩行器)なしで自立歩行可能 |
3 | 補助器具や介助がなければ歩行不能 |
4 | 歩行不能 |
認知症があるか、どの程度の認知症か
0 | 正常 |
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1 | 注意・記憶障害の自覚のみ |
2 | 注意・記憶障害を認めるが、時間・場所の見当識は良好 |
3 | 時間・場所の見当識障害を認める |
4 | 状況に対する見当識は全くない、または意味ある会話が成立しない |
尿失禁があるか、どの程度の尿失禁か
0 | 正常 |
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1 | 頻尿または尿意切迫 |
2 | 時折の失禁(1〜3回/週)以上 |
3 | 頻回の失禁(1回/日)以上 |
4 | 膀胱機能のコントロールがほとんどまたは全く不能 |
iNPHの患者さんでは、脳室の拡大が顕著に見られるため、画像診断は重要な検査の1つです。また、クモ膜下腔の状態を把握し、髄液循環を妨げる要因を注意深く観察し、その他の病気がないかを確認するために、脳梗塞や脳萎縮の存在、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍などの有無を同時に注意して診ます。
画像診断でiNPHの可能性が高いと診断される場合には、さらに診断の精度を上げるために脳脊髄液排除試験を行います。
iNPHは髄液循環障害によって脳室拡大と3徴候(歩行障害・認知症・尿失禁)をきたします。そのため腰椎の間からクモ膜下腔に穿刺針を刺し、過剰に溜まっている脳脊髄液を少量排除し、症状が改善するかを確認することで診断をすることができます。
脳脊髄液排除試験(タップテスト)は、横向きに寝て手でひざを抱えた状態で、腰椎の間から脊髄クモ膜下腔に穿刺針を刺します。使用する針は非常に細いため、痛みはほとんど感じません。
一回のタップテストで、30mlほどの脳脊髄液を排出させ、症状が改善するか確認します。
最初のタップテストで症状が一時的に改善することもあれば、複数回のタップテストの後に症状が改善することもあります。
基本的には4日程度の検査入院で評価を行っています。
タップテストにて症状が改善した場合は、iNPH であると診断できます。
iNPH には外科的治療(シャント手術)が有効で、手術は通常1時間以内に終了します。
余分な髄液を生理的な範囲で他の体腔に流す役割をするシャントチューブとよばれるチューブを身体に埋め込む手術です。
iNPHにはVPシャント術やLPシャント術などが有効とされています。
VPシャント術シリコン製チューブを頭からお腹までの皮下を通し、脳の中にたまっている脳脊髄液を腹腔に流して排出します。 |
LPシャント術腰椎の内側から脳脊髄液を腹腔に流す治療法です。シリコン製チューブは背中からお腹までの皮下を通るため頭を手術しないという利点がある一方で、腰が悪い方には実施できないことがあります。 |