平泉 志保
救命救急センター副センター長 兼 救急集中治療科部長
生きている限りいつかそれに終りが来ることは誰にとっても平等に訪れる運命です。医療がどれほど進歩してもそれは避けがたい事実であり、ひとが死に完全に打ち克つことはないのです。このようなことを考えながら救急に従事するのは人からみれば冒涜的かもしれません。しかし私自身は医師の仕事は救命だけではなく、死の瞬間、ご本人とご家族がどう向き合うか、どう受け入れていただくかそれをサポートすることも救命に並ぶ重要な使命であると初期研修医の頃から考えていました。
もちろん救命のために力を尽くすのは大前提です。当院では2011年より医療の早期介入のためにドクターカー事業を行い、私自身、開始当初から乗務員として参加しています。病院前診療は院内よりもより迅速で高度な判断を求められる場面が多いですが、学年の若いうちからも責任ある仕事を与えられるのが当院の救急科のスタンスであり、そういった負荷が勉強に励む原動力となっています。
また多施設での研修も可能で、わたしは離島に行かせていただき限られた医療資源の中で最良のパフォーマンスを行うために知恵の限りを尽くす貴重な経験をさせていただきました。できる限り希望にのっとった研修をさせていただける環境です。
そうやって日々研鑽し臨床で還元していく中で、しかし時にどれだけ力を尽くしても良い結果を得られなかった患者さんに遭遇します。救急現場は医療者にとっても患者、家族にとっても展開がめまぐるしく生死の分岐点に立ち会うことが多く、だからこそ救命も死の瞬間にもプロとして、人として関わっていきたいと考えています。それが人に、命に寄り添った医療ではないかと思います。初期研修医の頃にそうやって患者と向き合う先生方を見て当施設での研修を決めました。熱い気持ちを持って救急を志す若い先生方、ぜひ当院で一緒に頑張りましょう。