SSH STCSaiseikai Shiga Hospital Stroke Center
脳卒中センター

 

脳卒中センター長

診療部長

脳神経内科

藤井 明弘 

 

 

 

 

 

脳神経内科の紹介


脳神経内科では、虚血性脳卒中(脳梗塞・一過性脳虚血発作:TIA)を主に治療しています。

2021年(1月〜12月)は、367例の脳梗塞・TIA患者を治療し、その数は年々増加しています(図1)。

脳卒中診療は、発症後の速やかな救急搬送、急性期病院での専門的治療、早期からのリハビリテーションを切れ目なく繋ぐことが重要です。

滋賀県循環器病対策推進基本計画では、脳梗塞の超急性期治療目標として、『適応者に速やか(来院後1時間以内)に血栓溶解療法が開始でき、また速やかに血栓回収療法が実施できる』と掲げています。

当院ではこれらの超急性期治療を積極的に行っており、2021年(1月〜12月)、30例の血栓溶解療法、51例の血栓回収療法を施行しています(血栓回収療法については脳血管内治療の紹介を参照)。

また、来院後1時間以内の血栓溶解療法実施率は、43%です(2021年)。

 

当院の脳卒中病院前診療の中心は救急集中治療科で、ドクターヘリ・ドクターカーを駆使して素早く患者さんを搬送します。

そしてその後の超急性期治療を我々が担当しています。

脳梗塞の超急性期治療としては血栓溶解療法と血栓回収療法の2種類があります。

血栓溶解療法は、脳梗塞発症4.5時間以内の症例に行う組織プラスミノーゲンアクチベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator: rt-PA)という血栓溶解剤を用いた点滴治療です。

また、血栓回収療法は、特殊な形状のカテーテルを用いて直接血栓を除去する脳血管内カテーテル治療です。

ともに脳卒中治療ガイドライン2021にも「行うよう勧められる」推奨度Aのレベルで記載されています。

血栓溶解療法は、日本では2005年から可能となりすでに15年以上の歴史がありますが、径の太い脳動脈の再開通率が低いのが問題点でした。

その問題点を補う形で登場したのが、近年注目されている血栓回収療法です。

これらの治療の使い分けは、血栓溶解療法は点滴で投与するため、血管の末端に詰まった血栓に対しても有効であり、カテーテルが到達できない小〜中等度の脳血管閉塞に対しては血栓溶解療法が中心となります。

一方、内頸動脈や中大脳動脈起始部など径の太い脳主幹動脈閉塞に対しては、直接血栓を除去する血栓回収療法が中心になります。この二つのどちらに治療適応があるか、我々脳卒中の専門医が適切に判断します。

 

 

脳梗塞の病型と治療

超急性期以後の脳梗塞症例に対しては、その悪化や再発を抑えるための抗血栓療法が重要です。

抗血栓療法には、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防止する抗血小板療法とフィブリンができるのを防止する抗凝固療法があり、脳梗塞の病型に応じて治療法を使い分けます。

脳梗塞の病型には、3大病型と言われるアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞があり、それ以外に、奇異性塞栓症、大動脈原性塞栓症などの病型があります。

病型毎に抗血栓薬の選択が異なり、病型の判断を間違え、適切な薬剤を選択しないと、何度も脳梗塞の再発を繰り返すことになります。

そのため、当科では脳梗塞発症機序の精査にも力を入れています(図2)。

発症機序を同定するために、心電図、脂質系や凝固系の採血はもとより、頸部血管エコー、経胸壁心エコー、ホルター心電図、下肢静脈エコーが必要です。

また、奇異性塞栓症、大動脈原性塞栓症を診断するためには、経食道心エコーが必須の検査になります。

当院は、経食道心エコーを脳神経内科医が自ら施行している県内では数少ない施設です。2021年(1〜12月)は、73件の経食道心エコーを施行しています。

 

脳梗塞の治療においては、リハビリテーションも極めて重要で、特に早期にリハビリテーションを開始することが重要です。

当院のSCUには専従のリハセラピストを配置しており、超急性期から積極的なリハビリテーション施行が可能となっています。

当院の2021年度の「入院後3日以内のリハビリ開始率」は94.8%で全国平均より10%以上も高い数字となっています。

また、後遺症軽減目的にリハビリテーション継続が必要な方には、滋賀県統一脳卒中地域連携パスを利用し、回復期リハビリ病院との地域連携を行い、切れ目ない脳卒中診療を行っています。

特筆すべきことは、2016年より甲西リハビリ病院、南草津病院と『脳卒中パス連携カンファレンス』を週に1度開始(当院にて、両病院の院長・地域連携担当者を含めた情報提供カンファレンス開催)し、顔の見える関係を構築しています。

2020年には済生会守山市民病院がこの『脳卒中パス連携カンファレンス』に加わり、さらに今回のコロナ感染禍によりオンライン会議に変貌を遂げ継続しております。

このような回復期リハビリ病院との顔の見える関係を構築している施設は、当院以外には滋賀県にはないと考えます。

 

脳卒中の診療では、患者さんの速やかな搬送、搬送後の迅速かつ強力な超急性期治療、原因検索とその後の再発予防、超早期からの積極的なリハビリテーション、その後の回復期リハビリテーションを切れ目なく継続することが不可欠です。

これからも、職域の壁を越え、様々な専門家の力を結集させ、最適最良な脳卒中診療システムを構築していきます。

 

 

 

 

サイドナビ