SSH STCSaiseikai Shiga Hospital Stroke Center
脳卒中センター

 

救命救急センター長

救急集中治療科主任部長

越後 整

 

 

 

 

 

 

 

突然の手足の麻痺や呂律が回らないといった症状は脳卒中を強く疑います。

脳卒中は大きく分けて、脳梗塞と脳出血があり、どちらも治療までの時間が極めて重要となります。

脳梗塞は、発症から数時間が経ち、梗塞巣が完成してしまうと脳機能が失われます。

梗塞巣が完成する前に血流を回復させることが、予後と直結します。

一方、脳出血は発症後も血圧が高い状態が続くと、出血は拡大し、さらに脳を損傷することになります。

脳卒中急性期診療は時間との勝負です。

われわれ救急集中治療科は一刻を争う脳卒中診療に対して、少しでも予後を改善させ、後遺症を最小限にとどめることを目指してドクターカーおよびドクターヘリによる病院前救急診療に力を入れています。

 

 

ドクターカーの運用

【図1】当院のドクターカー(右)とラビットレスポンスカー(左)



ドクターカーは地域住民の救命率向上および後遺症軽減を目的として、2011年9月から運用を開始しました。

ドクターカーとは現場に医師・看護師を派遣し、救急救命士と協力して病院前から診療を開始するシステムです。

滋賀県湖南地域および甲賀地域を運行範囲としており、救急覚知段階(119番通報)で重症と判断された症例は全てドクターカーが要請されます(図1)(図2)。

その中には脳卒中を疑う症例も多く含まれています。

 

 

ドクターカーで救急現場に出動し、脳卒中を疑った場合は、現場で可能な処置として、速やかに点滴を開始します。

その後、脳卒中急性期診療(血栓溶解療法、血管内治療)が可能な病院に搬送します。

患者さんの状態から脳出血を強く疑った場合は、救急車内で降圧療法を開始します。

当院に患者さんを搬送する場合、現場からCT撮影の指示を行い、病院到着後そのままCT室に直行します(direct CT)。

CTで急性期の脳梗塞と診断した場合、CT室から直ぐに造影CTもしくはMRIの撮影を行います。

ドクターカーによる「現場からの初期診療、病院到着直後のCT撮影」により、脳卒中の診断が20分以上早まっています。

また、現場で救急医が初期診療を行うことで、脳卒中急性期治療が可能な病院を的確に選定出来ます。

脳卒中急性期の治療は時間との勝負であり、病院前救急診療の有効性は非常に高いと考えられます。

 

また、滋賀県循環器病対策推進基本計画法では、脳卒中の救急搬送体制について『救急現場・搬送中から薬剤投与などを行いながら、できるだけ早く脳卒中治療専門の施設への搬送すること』を目標に掲げられています。

当院のドクターカー運用は、まさしく本計画の理念とも合致いたします。

 

 

 

ドクターヘリの基地病院

【図3】京滋ドクターヘリ(愛称:KANSAIゆりかもめ)

当院は全国45機目、関西広域連合6機目として2015年4月に運航を開始した「京滋ドクターヘリ」(愛称: KANSAIゆりかもめ)(図3)の基地病院であり、滋賀県内の各消防本部からの要請で、4分以内にヘリポートを離陸し現場に向かいます(図4)。

ドクターヘリは県内であればほぼ15分以内に到達できるため、陸路であれば搬送に時間がかかる山間部においても早期医療介入が可能です。

ドクターカーと同様に、病院前から医療介入を行い、迅速な脳卒中急性期診療が可能な病院を選定し搬送を行います。

われわれ救急集中治療科が目指すのは、迅速かつ的確なプレホスピタル活動による脳卒中患者の転帰向上です。

 

 

 

「脳卒中チーム医療」に取り組む

当院では初期診療を担う救急医と脳卒中診療に関わる各科(脳神経内科、脳神経外科、放射線科)が連携して、病院を挙げた「脳卒中チーム医療」に取り組んでいます。

救命救急センター内で各科の医師が年齢、症状、発症時間、画像所見などを総合的に判断し、患者さんにとって最も適切な治療を行うことに重点を置いています。

 

 

 

 

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