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低侵襲手術  内視鏡的粘膜切除術

 

低侵襲手術

増山診療部長副院長  増山 守

最近の外科系分野(外科、泌尿器科、婦人科、整形外科など)の医療は、ただ単に病気を治すというだけでなく、身体への負担をできるだけ軽くし、そのうえでさらに効果的な治療を行うという低侵襲手術を目指す時代となりました。 低侵襲手術とは、皮膚の切る範囲を減らし、出血を減少させ、さらには手術時間を短縮する手術のことで、その中心になるのが鏡視下手術です。身体を傷つける 範囲を非常に小さくして、術後の痛みを減らしその結果回復を早め、より少ない日数で退院し社会復帰することができます。

 

当院では10年以上前から癌の低侵襲手術を導入し現在では大腸がん手術の70%以上、胃がんでは50%以上の手術を鏡視下手術で行っています。もちろんがんの手術以外(胆嚢結石、ソケイヘルニア、虫垂炎など)でも積極的に鏡視下手術を行っており年間で400例近くの症例を鏡視下で行っております。

 

術後疼痛の軽減、早期回復、早期社会復帰、精神的経済的負担の軽減を目指します。ぜひご気軽にご相談ください。

内視鏡的粘膜切除術

片山部長代行消化器内科 部長  片山 政伸

内視鏡的粘膜切除術1



当科では胃や食道、大腸など消化管の早期がんに対して、外科的な手術切除よりもからだの負担が少ない内視鏡的に切除するESDという方法を導入して います。ESDは「Endoscopic Submucosal Dissection:内視鏡的粘膜下層剥離術」の略です。消化管は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層という構造でできていますが、がんは最も内側の粘膜から発生します。ESDでは粘膜にできたがんに対して内視鏡の先端から特殊な電気ナイフを出して、筋層を傷つけないように粘膜下層を剥離して粘膜のがんを剥ぎとるように切除します。胃で最も早く保険収載され、次いで食道、大腸でも保険が適応されており、現在では国の認めた標準的な治療となっています。従来は EMR「Endoscopic Mucosal resection:粘膜切除術」という電気の流れるスネアという輪っかを用いて切除していましたが、切除できるがんのサイズや形態に限界があり、しばしば病変が「分割」切除でバラバラになってしまうため、切除したがんの正確な評価ができずにがんの遺残や再発が問題となっていました。

 

ESDはEMRよりも技術的な難易度は高くなりますが、大きなサイズのがんやあらゆる形態のがんを「一括」で切除できるようになり、切除した病変を正確に評価できるようになりました。また内視鏡医の技術や内視鏡医療器具の進歩によってESDに伴う穿孔や出血などの偶発症に対しては多くが内視鏡的に処置できるようになっています。

 

ESDの技術により大きな病変も切除できるようになりましたが、大切なことは「どのようながんであれば内視鏡的に切除して よいのか」、ということです。手術よりも負担が少ないESDですが、腸管の外にあるリンパ節は内視鏡での切除は不可能です。そのため内視鏡的に切除してもよいがんは「リンパ節転移の可能性がほぼ0」と考えられる病変になります。どのようながんがその基準を満たすかは食道、胃、大腸など部によって異なります。

 

治療前にはがんの種類や深さ、広がりなどが正確に判断できないこともあるため、最終的に切除されたがんの病理診断の結果によっては追加の外科的切除が必要になることもあります。そのため早期がんの切除に関しては内視鏡による詳細な観察はもちろんのこと、患者さんの状態(年齢 や基礎疾患など)、患者さんの希望を総合的に判断して治療方法を決定しています。

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