病院紹介

1.手洗いの遵守率-擦式アルコール製剤の使用量-

項目の解説

感染症の原因となる病原体は、しばしば手指を介してヒトからヒトに感染します。1847年にハンガリー出身の医師 イグナッツ・フィリップ・ゼンメルワイス(Ignaz Philipp Semmelweis)が感染症が手指を介して発生したことを証明して以降、手指衛生(石鹸と流水による手洗いと、擦式アルコール製剤)は感染対策において、簡便かつ有効な方法として行われています。

 

グラフの「擦式アルコール製剤の使用量*)」は、手指衛生が感染対策に重要な行為であるということを、院内でどの程度認識され、実践されているかを見るものです。病院の感染制御を語る上で、極めて重要な指標になります。

 

 

定義・計測方法

年次推移

 

 

2019年度からは、一人の患者さんに対する擦式アルコール製剤の使用量が、WHO(世界保健機関)が定める目標値(20ml)に達し、2020年、2021年は、新型コロナウイルス感染症の流行もあり、右肩上がりに使用量が増加していましたが、2022年はこれを下回る結果となりました。新型コロナウイルスが5類感染症に位置付け変更され、入院患者数が減ったことも要因の一つと考えます。

ICT (感染制御活動推進チーム;Infection Control Team)は、擦式アルコール製剤が、適切な場面で、適切な量を使用してもらうよう、様々な取り組みをしています。

取り組みの一つ目として、擦式アルコール製剤の携帯です。医師、看護師をはじめ、病院で働く職員は、必要なタイミングですぐに使用できるよう擦式アルコール製剤を携帯しています。

二つ目は、毎月、各病棟・部署毎のデータをグラフ化(見える化)し、啓発活動に取り組んでいます。三つ目は、WHOが定める手指衛生の5つのタイミング(表1を参照)を元に、手指衛生の5つのタイミングが適切にできているか、手指衛生の直接観察ラウンドを毎週実施しています。

また、来院される患者さんや家族、面会者にも擦式アルコール製剤を使用してもらえるよう、院内各部署やエレベーターホールなどに、擦式アルコール製剤を設置しています。

今後も手指消毒の使用量の調査や手指衛生の直接観察を継続し、結果を職員へフィードバックし、院内感染を防ぐ取り組みを行っていきます。

【表1】手指衛生の5つのタイミング