病院紹介

1.手洗いの遵守率-擦式アルコール製剤の使用量-

項目の解説

日々、患者さんのケアを行う医療従事者の手指は、病院感染を引き起こす医療関連の病原体の感染伝播経路となりやすいとされています。医療関連の病原体は、創などの感染を引き起こすような部位からだけではなく、正常で損傷のない部位からも多く検出されると言われており、そのような病原体の感染防止対策として最も基本的で重要なことは、アルコールベースの手指消毒薬を使用した手洗いの励行とされています。


しかし、現場の人手不足や業務量が増大すると、感染管理への注意が散漫となるなど、感染と人手不足や業務の過密さとの関連性が示唆されるという研究結果もあります(『医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン(2002年)』)。


この指標は、手洗いが院内感染防止の重要な行為であるということが院内でどの程度認識され、実践されているかを測り、認識度と実践とのギャップを埋め、行動変容に結びつけていくことを目的としています。

 

 

定義・計測方法

年次推移

 

 

WHO(世界保健機関)は、手指衛生の5つのタイミング(表1を参照)を定めており、日常的な手指衛生(石鹸と流水による手洗いと、擦式アルコール製剤)では、「擦式アルコール製剤」を使用するようガイドラインで勧告しています。

当院でもそのガイドラインに従い、院内各部署やエレベーターホールなどに擦式アルコール製剤を設置しています。更に医師、看護師、事務職員は必要なタイミングですぐに使用できるように擦式アルコール製剤を携帯しています。

2019年度からは、一人の患者さんに対する擦式アルコール製剤の使用量がWHOが定める目標値(20ml)に届きました。新型コロナウイルス感染症の影響もありますが、毎月、各病棟・部署毎のデータをグラフ化(見える化)し、病院全体で手指衛生に取り組んだ結果と考えます。

当院では感染制御室を中心に、様々な感染防止対策を行っています。取り組みの一つとして、ICT (感染制御活動推進チーム;Infection Control Team)リンクスタッフメンバーに手指衛生チームを設け、職員を対象に手洗い評価を行っています。蛍光着色剤を手に塗った後、手洗いを行い、洗い残しの度合いを評価しています。評価点数が低い職員には、マンツーマンで指導をしています。また、ICTの定期的なラウンドでも手洗い指導を行っています。

グラフの「手指衛生遵守率」は、病院の感染制御を語る上で極めて重要な指標です。今後も手指衛生遵守率の調査や手指衛生サーベイランスを継続し、院内感染を防ぐ取り組みを行っていきます。

【表1】手指衛生の5つのタイミング