虚血性心疾患に対する治療は、薬物療法、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)、冠動脈バイパス術があります。 PCIは、心臓の「冠動脈」の狭窄、閉塞してしまった病変に対して、橈骨動脈などの血管からカテーテル(治療用の細い管)を使って治療する方法です。
PCI施行後の予後は、PCIに関わる医師の経験や技術、合併症発生時への対応、緊急にPCIを施行できる体制などが影響するといわれています。
PCIによる死亡率を把握することは、PCIの質を評価する基本的な指標と考えています。
※急性心筋梗塞は、入院時Killip分類(心臓の機能分類)が「I:心不全なし」あるいは「Ⅱ:軽度から中度心不全」に該当する患者さんを対象にしており、また以下の患者さんを除いています。
・救命救急入院料を算定する外来死亡患者
・入院時点で心停止が認められた患者
・心筋梗塞、狭心症以外で死亡した患者
参考値
出典:独立行政法人国立病院機構平成30年度医療の質の評価・公表等推進事業における臨床指標の「PCI(経皮的冠動脈インターベンション)を施行した患者(救急車搬送)の入院死亡率」 ※中央値は、1.6%
救急搬送され主病名が急性心筋梗塞、狭心症であった入院患者さんのうち、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)を入院当日または、翌日に緊急で施行した救急患者さんうち、転帰が死亡となった割合です。急性心筋梗塞に関しては、Killip分類Ⅰ、Ⅱに該当する患者さんを対象としており、心肺停止状態で搬送された患者さんなどは除外してあるため、実際の患者数より母数は少なくなっています。 Killip分類とは、急性心筋梗塞での心機能障害の重症度を分類したもので、数字が大きくなるほど重症となります(表1)。
2020年に当院へ救急搬送されPCIを施行された患者さんの死亡退院数は1人でした。また、2011年からの10年間の治療成績は、1/281人で死亡率0.4%となりました。
予後には、患者さんの年齢や基礎疾患等の重症度の影響もありますが、死亡率を把握することで、的確な治療が行えていたか、体制等の整備に問題がないか等を検討し、必要な場合は早急に改善策を投じることが求められます。