心疾患は我が国における死因の15.2%を占め、悪性新生物(がん)に続き死因の第2位となっており、そのうち急性心筋梗塞が約19%と高い割合を占めています。(注1)
急性心筋梗塞から患者さんを救うには、迅速に診断し原因である冠動脈の閉塞をいかに早く再潅流させ、重症心不全や致死性不整脈などの合併症を防ぐかが重要となります。
この指標は、診断から治療までの過程が大きく影響してくるため、急性心筋梗塞の治療の質を評価するのはもちろんのこと、湖南地域唯一の3次救命救急センターである当院の急性期医療の質を評価する上でも、重要な指標の一つとなります。
注1:厚生労働省「平成27年度人口動態統計月報(概数)の概況」より
※1 以下を除く
・来院時心肺停止(CPA)の患者
・DNRの患者(家族などによって心肺蘇生を希望しなかった患者)
・急性心筋梗塞以外の傷病で死亡した患者
参考値
出典:東京都CCUネットワークの活動状況報告2018年 5,497例の死亡率
当院に急性心筋梗塞で入院された患者さんのうち、2020年度の死亡退院数は4人で死亡率4.5%という結果でした。参考値は算出条件が公表されていないためあくまでも参考程度となりますが、5.2%でした。(グラフ1)
グラフ2は、Killip分類別の患者割合の比較です。Killip分類とは、急性心筋梗塞での心機能障害の重症度を分類したもので、数字が大きくなるほど重症となります(表1) 。当院は、KillipⅠの割合が5割なのに対して、参考値では、約7割という結果でした。また、KillipⅣの割合は当院が約2割、参考値では約1割となっており、当院は、3次救命救急センターであり、比較的重症の患者さんが多く搬入されているということが分かります。
男女別の割合でみると、約8割弱を男性が占めていますが、死亡割合は、女性のほうが高い傾向にありました(グラフ3、4)。死亡患者の平均年齢は男性が72.5歳、女性90.8歳と女性のほうが高齢であり、重症度以外に年齢の要因も関与していることが推測されます。
予後は、治療までの時間だけではなく、患者さんの基礎疾患や来院時の状態も大きく影響してきます。今後も、的確な治療が行えていたか、来院から診断・治療までの過程や体制に問題がなかったかなどを検討し、急性心筋梗塞の患者さんのさらなる救命率向上へとつなげていきたいと考えています。