心不全とは病名ではなく、「心臓の機能がうまく働かなくなった状態」のことを表しています。原因は一つではなく、心筋梗塞、心臓弁膜症などの心臓疾患や高血圧など様々な疾患が心不全の原因となります。
心不全は、うまくコントロールができなければ、再発を繰り返す予後も悪い疾患です。また再発を繰り返す事で医療費も余計にかかってしまうという問題もあります。
最近では、心不全認定看護師を中心とした多職種で対応・退院指導を行い、再入院予防に努めております。そして、それが奏功しているかをしっかりとモニタリングすることが重要です。
この指標は、心不全患者の適切な管理ができているかを評価する重要な指標となります。
2022年度に心不全で循環器内科へ入院した患者さんは196名で、そのうち13名(6.6%)が退院後42日以内に再入院となっていました。また、再入院対象期間を180日(6ヶ月)とすると、13.8%(27/196)となっていました。
心不全の病期分類は「図1」に示している、「ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association;NYHA)」が定めた心不全症状の程度の分類がよく使用されています。心不全の重症度を4種類に分類し、数字が大きくなるほど、より症状が重い状態ということになります。これは心不全患者の入院の基準としても使用され、NYHA分類Ⅲ・Ⅳ度の患者が該当します。入院基準はそれ以外にも、基礎疾患を合併する場合や外来管理が不可能と考えられる社会的要因がある場合などがあります(「医療情報サービス Minds」より)。
グラフ2は、年齢階層別の患者さんの割合を年度別で示したものです。後期高齢者である75歳以上の患者さんの割合が大きく心不全患者さんの7割を占めていました。入院時の年齢は2017年度以降大きな変化はありませんでした(グラフ3)。また、退院後42日/180日以内に再入院する患者さんの平均年齢は再入院なしの患者さんの平均年齢より高くなっていました(グラフ4)。
グラフ5は、NYHA分類の患者さんの割合を年度別に示したものですが、NYHAⅢ~Ⅳの患者さんが約9割を占めており、特に症状の重いNYHA分類Ⅳの患者さんは半数以上を占めています。そして、NYHAが進むにしたがって心疾患による死亡の割合が増えていることが分かります(グラフ6)。
当院では2022年より滋賀県が作成した「心不全手帳」を活用し、患者さん、医師や看護師などの医療チーム、また地域の在宅医や施設などと情報を共有し、心不全の管理や治療に役立てています。
さらに、心不全は慢性的な疾患であり症状の管理や生活の質向上のため、当院では緩和ケア介入も行っています。緩和ケアとは患者さんとその家族に対して身体的、精神的、社会的な支援を提供し症状の緩和、苦痛の軽減、精神的なストレスの軽減などを目指しています。 今後も心不全療養指導士を中心に医学的なことはもちろんのこと、患者さんへの生活指導、教育や外来での適切な管理ができているか、生活の質向上などについて何か問題はなかったかなどを継続したデータ蓄積と分析から検討し、適切な管理とセルフケア教育へと継げて行きたいと考えています。