心不全とは病名ではなく、「心臓の機能がうまく働かなくなった状態」のことを表しています。原因は一つではなく、心筋梗塞、心臓弁膜症などの心臓疾患や高血圧など様々な疾患が心不全の原因となります。
心不全は、うまくコントロールができなければ、再発を繰り返す予後も悪い疾患です。また再発を繰り返す事で医療費も余計にかかってしまうという問題もあります。
最近では、心不全認定看護師を中心とした多職種で対応・退院指導を行い、再入院予防に努めております。そして、それが奏功しているかをしっかりとモニタリングすることが重要です。
この指標は、心不全患者の適切な管理ができているかを評価する重要な指標となります。
2020年度に心不全で循環器内科へ入院した患者さんは156名で、そのうち10名(6.4%)が退院後42日以内に再入院となっていました。また、再入院対象期間を180日(6ヶ月)とすると、15.4%(24/156)となっていました。
心不全の病期分類は「図1」に示している、「ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association;NYHA)」が定めた心不全症状の程度の分類がよく使用されています。心不全の重症度を4種類に分類し、数字が大きくなるほど、より症状が重い状態ということになります。これは心不全患者の入院の基準としても使用され、NYHA分類Ⅲ・Ⅳ度の患者が該当します。入院基準はそれ以外にも、基礎疾患を合併する場合や外来管理が不可能と考えられる社会的要因がある場合などがあります(「医療情報サービス Minds」より)。
グラフ2は、年齢階層別の患者さんの割合を年度別で示したものです。後期高齢者である75歳以上の患者さんの割合が大きく心不全患者さんの7割を占めていました。入院時の年齢も年々上昇傾向にあり、2012年度から約2歳上がり約80歳となっています(グラフ3)。また、退院後42日/180日以内に再入院する患者さんの平均年齢も有意に高くなっていました(グラフ4)。
グラフ5は、NYHA分類の患者さんの割合を年度別に示したものですが、NYHAⅢ~Ⅳの患者さんが約9割を占めており、特に症状の重いNYHA分類Ⅳの患者さんは半数以上を占めています。そして、NYHAが進むにしたがって心疾患による死亡の割合が増えていることが分かります(グラフ6)。
当院では平成29年度より、地域サービスとの連携を目的に、慢性心不全認定看護師が中心となって、心不全患者さんごとの心不全管理のポイントなどを訪問看護ステーションと情報共有する取り組みや患者さんへ直接連絡して家庭での様子を伺ったり必要があれば指導を行ったりする取り組みを開始しました。また、75歳以上の心不全患者が多くなっているため、CGA(高齢者総合的機能評価)などによる問題点の把握、評価等を行っています。
今後もこのモニタリングを継続し、医学的なことはもちろんのこと、患者さんへの生活指導、教育や外来での適切な管理ができているか、何か問題はなかったかなどを継続したデータ蓄積と分析から検討し、外来での適切管理とセルフケア教育へと継げて行きたいと考えています。