病院紹介

2.急性脳梗塞患者さんの血栓溶解薬投与率

項目の解説

2005年10月に血栓溶解薬である組織プラスミノーゲンアクチベーター( rt-PA :アルテプラーゼ)静注療法が日本でも保険診療として治療を行うことが承認され、発症後4.5時間以内(※H24/8/31までは3時間以内)の超急性期脳梗塞の症例では、臨床病型を問わずrt-PA静注療法の適用の有無を決定することが重要になりました。超急性期にrt-PA静注療法を実施することにより、後遺症なく社会復帰できる可能性が高くなります。


しかし、 rt-PA静注療法の実施に際しては、経験を積んだ専門の医師が適切な設備を有する施設において、患者さんの状態などが適応要件を満たす場合に実施するなどの厳格な適応制限があります(日本脳卒中学会「 rt-PA :アルテプラーゼ静注療法適正治療指針」)。よって、発症後4.5時間以内であっても、患者さんの禁忌事項などで適用要件を満たさないために、実施できない場合があります。


この指標は、急性脳梗塞患者さんにどの程度rt-PA静注療法が実施されているかをみる重要な指標です。

 

【解説】

「rt-PA (recombinant tissue plasminogen activator)遺伝子組換え型組織プラスミノーゲン活性化因子」とは、血管内を閉塞した血栓を溶解する生体内の蛋白質分解酵素であるプラスミンを活性化する。通常は血管内皮細胞から分泌されるが、遺伝子組み換技術により製剤化したもので、強力な血栓溶解薬です。出血の可能性の高い患者さんには使用できません。

 

定義・計測方法

※発症から4日以内で、入院主病名が脳梗塞であった患者さん、入院中発症も含む。

 

年推移

 

 

脳梗塞は発症からの時間経過、重症度や臨床病型により選択できる治療法が異なるため、迅速な診断と治療の開始が重要となります。rt-PA静注療法の適応は発症後4.5時間以内で、日本脳卒中学会「rt-PA:アルテプラーゼ静注療法適正治療指針」を遵守し、チェックリストの適応要件を満たす場合に、患者さん(ご家族)へ治療についての説明を行い、同意を得て実施しています。

当院の2021年度における血栓溶解薬の投与割合は9.9%でした。この数値は、急性脳梗塞の診断であっても適応外となる場合や、発症から病院到着までの時間、患者さんの既往歴、患者さん(ご家族)の治療に対するご意思も影響するため、単純に比較し評価することはできません。

また、当院へ脳梗塞で搬送/来院される患者さんが年々増加しており、同時に様々な基礎疾患や病態の患者さんが増加しています。そして、近年では、特に服用中の薬の関係で血栓溶解薬を投与できず、「経皮的脳血栓回収術」を実施する患者さんが増加傾向にあり、専門医が患者さんの状態を迅速に判断し、適切な超急性期の脳梗塞の治療を実施しています。

今後も超急性期脳梗塞患者さんの治療を積極的に行い、地域における急性期病院の機能を果たしていきます。

<脳卒中センター/医事課診療情報管理室>