病院紹介

5.経皮的脳血栓回収術を実施した患者さんの来院から穿刺までの時間

項目の解説

超急性期の脳梗塞の治療は、血管に詰まった血栓を溶かし血流が再び流れるようにするrt-PA(アルテプラーゼ)の静脈内投与(発症後4.5時間以内)を含む内科治療に追加して、発症6時間以内に脳血管内治療を開始することが強く勧められています(※1) 。また、6時間を超えた場合でも一定の基準を満たす場合に限りますが、発症または最終健常確認時刻から16時間以内では本治療を行うよう強く勧める、24時間以内でも本治療を行うよう勧めるとされています(※2)。

 

脳血管内治療とは、血管内に血栓回収用デバイス挿入し、詰まっている血栓をからめて取り除くものです。脳血管内治療を施行することにより、患者さんの予後(症状)が有意に改善したという研究結果も報告されています(※3)。

 

脳血栓回収術が開始されるまでの時間には、来院時からの診断と治療を迅速に行う、チーム医療を必要とします。

 

※1)脳卒中治療ガイドライン2015 [追補2017]

※2)経皮経管的脳血栓回収用機器 適応使用指針 第3版

   注)施行には、詰まっている血管の場所などの様々な条件があり、治療適応については医師が判断します。

※3)Goyal M, et al Lancet.2016;387:1723-1731 (経皮経管的脳血栓回収用機器 適応使用指針 第3版より抜粋)

 

定義・計測方法

来院から治療開始(穿刺)までの時間

※発症日不明の患者さんを除く

※入院中発症の患者さんを除く

 

年次推移

 

 

 穿刺から有効な再開通までの時間

 

 

2015年4月に発表された経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針(第2版)では、来院から動脈を穿刺するまでの時間を120分以内を目標にして実施するよう提唱されています。2016年の来院からカテーテル穿刺までの時間は91分と使用指針(第2版)の目標とする120分以内で実施できていることが分かりました。また、穿刺から再灌流までの時間は49分と、年々短縮されていることが分かりました。

また、その後の様々な研究で脳血栓回収術の有用性や安全性がさら証明され、一定の基準を満たす場合に限りますが本治療の適用が拡がり、2018年3月に発表された経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針(第3版)に盛り込まれました。また、少しでも早く治療を開始するとともに、最適の方法により少しでも早く再開通を得ることが必要であると推奨されていて、合理的な目標として来院から動脈穿刺までの時間が「75分以内」と提唱されています。

脳梗塞では発症からの時間経過、重症度や臨床病型により選択できる治療法が異なるため、迅速な診断と治療の開始が重要となります。従来より当院では脳卒中センターを設置し、専門の医師が24時間オンコール体制で治療を行える環境を整えておりました。更に2017年2月からは、超急性期脳梗塞患者さんの治療を積極的に行い地域における急性期病院の機能を果たすべく、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の患者さんを搬送直後より脳卒中の専門医と専門医療スタッフがチームを組み、24時間365日対応できる滋賀県下最大規模の「SCU(stroke care unit;脳卒中ケアユニット)」を開設しています。また、2016年5月には脳神経血管内治療専門医が着任し、脳血栓回収術の件数も大幅に増加しました。

日本ではまだ血管内治療専門医の数が足りなかったり、主要都市に集中したりして脳梗塞に対する血管内治療を受けられない患者さんが大勢いると言われており、日本脳神経血管内治療学会が脳梗塞患者さんを救う体制を整える取り組みを始めています(※)。

脳梗塞を含む脳卒中の治療は、“早期”受診、“早期”治療開始という「時間」が非常に重要になってきます。患者さんや周りの人が異変に気づき、できる限り早く病院に来て頂くことも、脳梗塞の治療では非常に重要です。

※)第32回日本脳神経血管内治療学会学術総会会長講演「神戸宣言」より