病院紹介

3.急性脳梗塞患者さんの来院から血栓溶解療法開始までの時間

項目の解説

 

脳梗塞発症後4.5時間以内(※H24/8/31までは3時間以内)の超急性期では、発症後可能な限り早期にrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法を行うことが、神経学的予後の改善に重要です。

 

rt-PA静注療法の実施に際しては、来院時からの病歴、身体所見等の迅速な把握、頭部CT、MRI・MRA、頸動脈エコーを施行し病型の推定、治療方針の検討が必要であり、特に、日本脳卒中学会「rt-PA:アルテプラーゼ静注療法適正治療指針」の適応要件を満たす等の厳格な制限があるため、適用の有無を決定することが重要となります。

 

rt-PA静注療法が開始されるまでの時間には、来院時からの診断と治療を迅速に行う、チーム医療を必要とします。

 

【解説】

「rt PA(recombinant tissue plasminogen activator)遺伝子組換え型組織プラスミノーゲン活性化因子」とは、血管内を閉塞した血栓を溶解する生体内の蛋白質分解酵素であるプラスミンを活性化する。通常は血管内皮細胞から分泌されるが、遺伝子組み換え技術により製剤化したもので、強力な血栓溶解薬です。出血の可能性の高い患者さんには使用できません。

 

定義・計測方法

※入院中発症の患者さんを除く

 

【グラフ1】年推移

 

 

【グラフ2】脳梗塞発症からrt-PA投与時間までの平均時間

 

 

 

この指標は、病歴や身体所見を把握する時間、CTやMRI などの必要な検査の指示から検査終了までの時間、それら結果から診断を行い、治療方針を検討する時間などが含まれます。また、患者さん(ご家族)へ病状と治療方針、治療のメリット・デメリット等の説明を行い、同意を頂いて実施するまでの時間等も含みます。

2023年に脳梗塞で来院しrt-PA療法を行った患者さんは33名でした。そして、来院されてから治療開始までにかかった平均時間は68分(中央値:60分)でした。

rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針では、来院後60分以内の治療開始が推奨されていることもあり、当院では2014(平成26)年4月末より、 搬送から1時間以内にrt-PA治療開始することを努力目標として、診断と適応の決定から治療までを迅速に行えるよう取り組みを開始しました(Within 60 minutes (Win60)キャンペーン)。救急隊からの連絡にてrt-PA治療の可能性がある患者さんの来院情報があれば、発症時間や既往歴など統一した項目を救急隊へ問い合わせを行い情報を収集します。更に、医師への連絡やMRIの撮影準備を行うなど、救急車到着前から受入れ準備を行います。到着後も行うべき検査処置等についてのプロトコールを作成し、統一を図りました。更に、時間を要するMRI撮影についても時間が短縮できるよう放射線技師の協力を得て、撮影方法を見直しました。

rt-PA 療法の実施には、医師、看護師、画像診断科、検査科等の総合的なチーム医療の実践が不可欠です。当院では「脳卒中オンコール」を設けており、専門の医師が夜間・休日を含む24時間体制で対応しています。また、rt-PA療法の適応となる“4.5時間”は、発症後からの時間であるため、病院に来られるまでの時間も重要となります(※1)。当院を受診された発症から来院までの平均時間は約74分となっています(グラフ2)。医療者側と救急隊との地域チーム医療の実践も必要としますが、患者さんや周りの人が異変に気づき、できる限り早く病院に来て頂くことも非常に重要です。

※1)rt-PA療法の適応には、まず治療の開始時間が第1の問題となりますが、その他、既往歴や検査結果、重症度等により、受けられない場合もあります。