病院紹介

3.急性脳梗塞患者さんの来院から血栓溶解療法開始までの時間

項目の解説

脳梗塞発症後4.5時間以内の超急性期では、発症後可能な限り早期にrt-PA(アルテプラーゼ静注療法)を行うことが、生命予後の改善に重要です。


rt-PA静注療法の実施に際しては、来院時からの病歴、身体所見等の迅速な把握、頭部CT、MRI・MRA、頸動脈エコーを施行し病型の推定、治療方針の検討が必要であり、特に、日本脳卒中学会「rt-PA:アルテプラーゼ静注療法適正治療指針」の適応要件を満たす等の厳格な制限があるため、適用の有無を決定することが重要となります。


rt-PA静注療法が開始されるまでの時間には、来院時からの診断と治療を迅速に行う、チーム医療を必要とします。

 

【解説】
「rt-PA (recombinant tissue plasminogen activator)遺伝子組換え型組織プラスミノーゲン活性化因子」とは、血管内を閉塞した血栓を溶解する生体内の蛋白質分解酵素であるプラスミンを活性化する。通常は血管内皮細胞から分泌されるが、遺伝子組み換技術により製剤化したもので、強力な血栓溶解薬です。出血の可能性の高い患者さんには使用できません。

※平成24年8月31日よりrt-PAの使用基準について、脳梗塞発症後3時間以内の使用から発症後4.5時間以内へ適応が変更になりました。

 

定義・計測方法

※発症日不明の患者さんを除く入院主病名が脳梗塞であった患者さん
※入院後発症の患者さんを除く

 

年次推移

 

 

 

  

 

 

この指標の時間は、病歴や身体所見を把握する時間、CTやMRIなどの必要な検査の指示から検査終了までの時間、それら結果から診断を行い、治療方針を検討する時間などが含まれます。また、患者さん(ご家族)へ病状と治療方針、治療のメリット・デメリット等の説明を行い、同意を頂いて実施するまでの時間等も含みます。

2017年に脳梗塞で来院しrt-PA療法を行った患者さんは43名でした。そして、来院されてから治療開始までにかかった平均時間は73分(1時間13分)で、最短で30分、最長で167分でした(グラフ1)。

rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針では、来院後60分以内の治療開始が推奨されていることもあり、当院では2014(平成26)年4月末より、搬送から1時間以内にt-PA治療開始することを努力目標として、診断と適応の決定から治療までを迅速に行えるよう取り組みを開始しました(Within 60 minutes (Win 60)キャンペーン)。救急隊からの連絡にてrt-PA治療の可能性がある患者さんの来院情報があれば、発症時間や既往歴など統一した項目を救急隊へ問い合わせを行い情報を収集します。更に、医師への連絡やMRIの撮影準備を行うなど、救急車到着前から受入れ準備を行います。到着後も行うべき検査処置等についてのプロトコールを作成し、統一化を図りました。更に、時間を要するMRI撮影についても時間が短縮できるよう放射線技師の協力を得て、撮影方法を見直しました。

以上のように手順も統一化されたことによって診断・治療体制が整備されたことやドクターカー/ヘリ運航などによる病院前診療の充実などによって、以前は、来院時点で発症時間からだいぶ経過しておりt-PA適応外となっていたケースにrt-PAを投与できた症例が増加しました(グラフ2)。

rt-PA療法の実施には、医師、看護師、画像診断科、検査科等の総合的なチーム医療の実践が不可欠です。当院では「脳卒中オンコール」を設けており、専門の医師が夜間・休日を含む24時間体制で対応しています。また、rt-PA療法の適応となる“4.5時間”は、発症後からの時間であるため、病院に来られるまでの時間も重要となります(※1)。医療者側と救急隊との地域チーム医療の実践も必要としますが、患者さんや周りの人が異変に気づき、できる限り早く病院に来て頂くことも非常に重要です。

※1)rt-PA療法の適応には、まず治療の開始時間が第1の問題となりますが、その他、既往歴や検査結果、重症度等により、受けられない場合もあります。