病理診断センター
病理検査室の業務について
1、病理組織検査の流れ
検体受付
- ホルマリンに固定された手術摘出材料、生検材料等が依頼用紙とともに提出される【画像1】
- 依頼用紙と検体を確認してから検体ラベル・依頼用紙のバーコードを読み込み、到着確認 自動採番され、カセットに専用バーコードを印字
- 依頼用紙に作製ブロック数や切り出し図などを記載し、スキャナで取り込み
|
【画像1】 手術で摘出された臓器はホルマリンで固定される。

|
標本作製
-
- 生検材料やポリープ等は病理担当技師が切り出し、包埋カセットへ
- 手術摘出材料等は病理医が切り出し、包埋カセットへ【画像2】
- 病理医が切り出した組織のブロック数は依頼書に記載され、病理システムに入力
- 包埋カセットはアルコールまたはホルマリンに浸漬し、乾燥を防ぐ
- 脱脂、脱灰が必要な場合は固定後に施行
- 自動包埋装置にて脱水、脱脂、パラフィン浸透を行う
- 包埋、薄切【画像3】
- 伸展【画像4】
- HE染色、封入【画像5】
- ラベル貼付【画像6】
- 出来上がった標本を顕微鏡でチェックし、依頼用紙と合わせて病理医へ提出
|
【画像2】 適切な部位を選んで切り出し、カセット(ピンクの容器)に詰める。

【画像3】 薄切。とてつもなく薄く切る作業。

【画像4】 伸展。薄切した標本をスライドグラスになじませる。

【画像5】 自動でHE染色を行う装置。

【画像6】 HE染色された組織標本。

|
組織診断
- 病理医は標本を鏡検し組織診断を行い、報告書を作成
- 必要に応じて追加で特殊染色や免疫染色等も施行
- 病理報告書は病理システムにて確定送信され、電子カルテに反映
2、術中迅速組織検査の流れ
検体受付
未固定の状態で手術摘出材料、生検材料が依頼用紙とともに提出される
検体処理
検体の血液成分や水気を軽く拭きとり、プラスチック製のプレートにコンパウンドを流し入れ、その中に検体を埋める【画像7】 |
【画像7】 コンパウンド(小皿に入っている透明なゲル)に検体を埋める。

|
標本作製
- -80℃に冷却したヘキサン(有機溶剤)に浸漬し、凍結させる
- 包埋皿を取り除き、クリオスタットにセットし、薄切を行う(作成する標本は原則2枚)【画像8】
- アルコール固定後、迅速用HE染色、封入【画像9】
|
【画像8】 薄切。凍結させたコンパウンド内の検体を薄く切る。

【画像9】 手作業でHE染色を行う。

|
組織診断
- 凍結切片組織標本2枚は病理医が鏡検し、手術室の執刀医へ結果を報告する
- 凍結組織は解凍しホルマリン固定後、通常の病理組織標本作製へ(凍結戻し永久標本)
- 凍結切片組織標本と凍結戻し永久標本凍結組織は解凍しホルマリン固定後、通常の病理組織標本作製へ(凍結戻し永久標本)
- 凍結切片組織標本と凍結戻し永久標本をあわせて、最終報告書を作成
3、細胞診検査の流れ
検体受付
- スライドガラスに直接塗抹された標本や、穿刺吸引した注射器、スピッツに採取された尿や体腔液などが依頼用紙とともに提出される
- 組織検査同様、検体ラベル・依頼用紙のバーコードを読み込み、到着確認
- 検体番号が自動採番され、依頼用紙に標本作製枚数を記入
標本作製
- 尿や体腔液など、スピッツに採取されているものは遠心し、沈渣をスライドガラスに塗抹後、アルコールスプレー固定
- 注射器などに提出されたものはスライドガラスに吹き出し、塗抹する
- 必要に応じて液状検体標本(LBC)も作製
- 喀痰や膿汁などの粘度の高いものはスライドガラスに直接のせ、もう一枚のスライドガラスで擦り合わせ、アルコール固定
- 自動染色装置にてパパニコロウ染色を施行。また必要に応じてギムザ染色、PAS反応など用手法にて施行。【画像10】
|
【画像10】 パパニコロウ染色は自動染色装置で、ギムザ染色は手作業で染色する。


|
細胞診断
- 細胞検査士がスクリーニング、判定後に報告書を作成する。【画像11】
- 偽陽性、陽性所見があれば細胞診専門医が鏡検し、診断後に報告書を作成する
- 組織診同様、報告書は病理システムにて確定・送信され、電子カルテに反映される。
|
【画像11】 細胞検査士によるスクリーニング

|
4、術中迅速細胞診検査の流れ
検体受付
- ほとんどの場合が術中の腹水や洗浄液で、スピッツに入った状態で提出される
- 依頼用紙と合わせ、到着確認を行い、標本番号を割り振る
- 迅速パパニコロウ・ギムザ染色用に2枚、通常のパパニコロウ・ギムザ染色用に2枚の計4枚の標本を作製
標本作製
- 迅速ギムザ染色1枚をCyto Quickにて施行、乾燥後に封入し、鏡検
- 迅速パパニコロウ染色1枚を自動染色装置の迅速プログラムにて施行する
細胞診断
- 上記2枚の標本を細胞検査士が鏡検、ダブルチェックを行い、病理医(細胞診専門医・指導医)が診断後、手術室の執刀医へ報告する
- 残り2枚の標本は後日鏡検し、全てを合わせて最終報告書を作成
5、病理解剖の流れ
病理解剖室までの流れ(臨床現場)
- 臨床医が病理医に剖検の依頼
- 依頼承諾後、ご家族に剖検の承諾
- 承諾後、待ち時間がある場合には、ご遺体を解剖前室保冷庫にて4℃保存
- 解剖準備(病理解剖執刀医1名、解剖介助病理担当技師1~2名の確保)
病理解剖実施
- 剖検室に空調をかける(空気のカーテン)【画像12】
- 開胸腹後、一塊摘出法にて臓器を摘出
- 検索を進めながら諸臓器を分離し、重量計測、写真撮影後ホルマリン固定
- 必要に応じて開頭も行う(別承諾が必要)
- 解剖時にできる限り肉眼所見を取り、死亡診断書へ記載
- 解剖開始後、清拭を含めてご遺体が霊安室にお戻りいただくまでの時間は約2~3時間程度
|
【画像12】 剖検室(上:全景/下:感染予防のための空調カーテン(矢印))


|
病理解剖後
- 大体1ヶ月を目途に切り出しを行い、追加の肉眼所見を取り、肉眼診断書を作成
- 通常の病理組織標本作製の過程で、標本を作製
- 病理医が鏡検し、組織学的検索を行う
- 病理医が肉眼所見と組織学的所見を合わせ、病理解剖学的診断書案を作成
- 臨床医と病理医、その他医療従事者を含めた病理解剖症例検討会(CPC)を行い、最終的な病理解剖学的診断書を作成