診療科・部門

 安全管理室

医師とのパートナーシップを築き、すれ違いをなくすためのQ&A

診察中の医師の思考回路と患者さんの思いには、大きなギャップが存在します。主治医の先生が話しにくい、あまり話を聞いてくれない、聞き方が分からないと言っていては、いつまでたってもこの溝は埋められません。医療に積極的に参加することで、これを解消していきましょう。患者さんからよく聞く疑問や不満にお答えする形で解決法を説明します。

 


 Q1 

右手がしびれるのですが、私のような症状の場合、どの科の先生に診てもらうのがよいのでしょうか? 受付では内科と整形外科を両方受付けさせられました。そのため病院でかなりの時間を費やしました。

   A   

当院では総合診療科を開設しておりません。総合受付で判断できない場合、内科的な病気が少しでも考えられる症状なら総合内科で受け付けしていただきます。ただし、初診の患者さんには十分時間をとることが多いので待ち時間が長くなり、その後の診察で実は整形外科の異常だということになると、すでに他科の受付時間を過ぎてしまうことになります。

そこで便宜を図り、他に可能性のある科も受付してもらうことがあります。住まいのお近くにかかりつけの開業医の先生がおられる場合は、まず診療所を受診されて病院での診療科を相談されるのがよいでしょう。


 Q2 

血液検査で異常値マークが付いていて不安、医師からは詳しい説明がなかった。

   A   

血液検査などで検査を重ねるほど異常が増えていくことがあります。検査値が完全無欠な人の方が少数派かもしれません。医師は「異常」は異常と伝えることが多いですが、気にしなくてよい「異常」でも、不安が増してかえって具合が悪くなったりするので、簡単に「放っておいてもいいですよ」くらいにしか説明しないことがあります。また外来時間中に検査所見の詳しい意味まで説明する時間がとれないことがあります。検査の意味はインターネットで検索すれば平易な解説が見られます。主な血液検査については当院の臨床検査部のホームページをご覧ください。

その場で「自分の将来にとってこの「検査所見」は危険でしょうか、それとも心配しなくてよいのでしょうか」とお尋ねいただいてもよいでしょう。


 Q3 

具合が悪くて検査を受けたのに診断がつかず、様子をみてくださいと言われて不安。

   A   

重大な病気の可能性がある場合は、誰が、いつまで、どのようにして様子をみるのか、医師は説明する必要があります。膠原病のように、いくつかの症状や検査所見が揃うまで診断に時間を要する病気もあります。また、しんどい理由が知りたくて受診される方は大勢いらっしゃいます。疲れやすい、頭が重い、ふらふらするなどの症状は不定愁訴と呼ばれ、特定の疾患の診断につながりません。過労や睡眠不足でもみられる症状ですので、いろいろ検査をしても異常は出ないので当然ながら病名が付きません。不健康感=病気というわけではないのです。「病気でなくてもこのような症状がでることがありますか? いつまで様子をみればいいですか?」と尋ねてみてください。

総合内科には、多くの方が仕事や生活状況で無理を強いられて具合が悪くなり、「ちょっと不健康」な生活が長期間続いていることをあまり意識せず、どこか内臓に重大な病気があるのではないかと心配になって来院されます。まず仕事の休憩の取り方、睡眠のとり方、規則正しい食事、ストレス解消などの自己管理はできていますか?


 Q4 

咳止薬をもらって飲んでいるのに1週間も咳が続くのですが、悪い病気じゃないでしょうか?原因について尋ねると、医師から「わかりません」といわれて不安になりました。

   A   

咳が長く続く場合でも熱や痛みがなく食欲もあれば、検査を受けずに3週間程度様子をみることは医学的に問題ありません。それ以上に長く続く咳の場合、疾患がいくつかに絞られてきます。初めの段階であらゆる病気をゼロにするために膨大な費用を費やしたところで、初期の段階ではみつけられないことも多く、「経過をみる」その間ちょっと「休養する」ことで、多くの場合症状が良くなり、無駄な検査や治療を受けなくて済みます。

多くの症状は、原因がわからないまま自然治癒するといったことはむしろ普通のことです。多くの病気も医師が治すわけではなく、ときにサポートしているだけです。たとえば胸が痛いという理由で来院され、問診と簡単な検査で原因が分からなかった方の9割以上は、2回目の診察時には症状が消失していたというデータもあります。医師は危険な病気の症状を知っており、それを問診で確認してから、わからないまま様子を見るかどうかを判断しています。真意は「おそらく治ると思うけれど確実な保証はできないので経過をみましょう」、ということです。「わかりません」とぶっきらぼうに言われたために、不安になったり、「あの医師は冷たい」といった批判になるのだと思われます。


 Q5 

診療所で治療を受けていますが、症状がすっきりよくならないので、家族が大きい病院に変えてみたらと勧めるのですが、紹介状は必要ですか?

   A   

いきなり違う病院に行きたいと言い出すのは気まずいので、黙って紹介状を持たれず来院される患者さんが多いようですが、最近では施設間の紹介システムはよく整備され、交流も盛んに行われています。病院に治療の場を移される時は、紹介状があるほうが望ましいです。手がかりは多いにこしたことはないですし、無駄な検査や治療を省くことにもつながります。医療は公共サービスです。商品の購入と同じような感覚で、ドクターショッピングすべきではないと考えます。

かかりつけ医はよく患者さんの経過を気にしていたり、治療計画を考えていたりしますから、後で黙って受診していたということがわかればとてもショックを受けます。すっきりしない今の症状が、特別心配な経過なのか、それとも想定範囲内なのか、患者さんには判断できません。まず、その相談をかかりつけの先生にしてみてはいかがでしょうか。

しかし紹介状よりもっと大切なことは、ご自分の検査結果や治療の内容をご自身で普段から管理されることです。緊急時に紹介状がもらえなくても、いざという時にも役に立ちます。


 Q6 

脳卒中が心配なのに、CTやMRの検査をしてもらえなかった。

   A   

マスメディアの影響で「頭痛がする」だけで即、脳卒中を心配して検査を希望して来院される方も多いですが、われわれ総合内科医は問診と診察で重大な疾患かどうかを見分けるプロです。問診時には、見逃すと命にかかわる怖い病気から考えて尋ねていき、次に年齢などを考慮して一番多い病態に当てはめていくことで、効率よく正しい診断にたどりつこうとします。症状があれば即、検査と治療というのでは、検査漬け・薬漬けにつながります。医療費も高騰し、保険医療財政がますます逼迫します。

もし心配でしたら「私の症状なら、詳しい検査までする必要はないでしょうか?」「どうすれば症状が楽になりますか?」とお尋ねいただくとよいと思います。


 Q7 

何年も前から会社の検診で高脂血症といわれ、体はなんともないのに、いつも病院に行くよう指示がでる。受診に来ると必ず医師に「ほっておくと危険です」といわれ、叱られているようで受診したくない。

   A   

今まで何ともなかったし、いまさら治療なんて納得できない。私の友人も、「患者を増やしてもうけようとしているのでは」と言っていた、など生活習慣病健診ではありうる話ですね。血液検査のみの情報から、何万人という大勢の疫学データを根拠に10年ほど先の予測を説明しています。無症状の患者さんは自分のこととしてとらえることが難しいものです。すぐに心筋梗塞や脳梗塞になるかどうかわかりませんが「大丈夫ですよ、絶対安全ですよ」という保証はできません。職業柄、100人中3~4人の発症率だとしても、正常な場合と比べれば大いに危険であることを伝える義務があり、気のきいた嘘は言えません。ご自分がどのくらい危険なのかを尋ねていただき、判断してください。最近は日本人のデータも揃ってきており「検査値がよくなると、どのくらい私の将来の元気度、長生きにつながりますか?」とお尋ねいただくのがよいかもしれません。

当院の外来では血液データのみから曖昧な予測をするのではなく、動脈の性質を直接調べる血管エコーや脈波検査で生活習慣病の体への影響をしらべて、ご自身の体の変化を自分の目で確かめ実感してもらい、将来のために適切な対策を立てていただきます。


 Q8 

医師から治療方針を渡されたんですが、「診療ガイドライン」ってなんですか?

   A   

よくある病気の診断と治療について、多くの新しい医学研究論文から導き出された現時点での世界標準、あるいは日本の標準的なやり方を示した指針であり、各学会が中心となってまとめた手引き書です。治療の有効性については、多くの科学的根拠に基づいて強く勧められるものから、根拠が乏しく効果が不明なもの、逆に害が大きく行うべきでない治療、というように分けられています。

現場の医師も患者さんもガイドラインに絶対従わなければならないわけではありませんが、特殊なケースを除き、これに従うことでその病気の専門医と同じレベルの診療ができることになり、成果が得られやすくなります。診療ガイドラインに沿って、患者さんに診断と治療の筋道を説明することは、これから盛んになっていくと思われます。


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