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白内障治療と眼内レンズについて

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白内障ってどんな病気?

私たちの目はカメラとよく似ていて、レンズやフィルムなどの働きをする部分があります(図1)。

白内障はレンズの働きをしている水晶体という部分が濁ってしまう病気で、主に水晶体の中に含まれるたんぱく質が変化することで起こります。例えば卵の白身は加熱すると白く濁りますが、それとよく似たイメージです。水晶体は一度濁ってしまうと残念ながら透明に戻ることはなく、徐々に進行していきます。原因として最も多いのは加齢ですが、糖尿病などの全身疾患に合併したり、幼少期に発症したり、薬の副作用によって起こったりなど様々です。

 

 

 

 

 

白内障の症状について

白内障の症状としては、「ものがぼやける、かすむ」「ものが二重に見える」「まぶしく感じる」などが代表的です。

 

60~65歳以上になると、症状が何もなくても実は白内障になっているということも珍しくありません。水晶体が混濁すると外界からの光が目の奥の網膜(カメラで例えるとフィルムに相当する部分)まで届きづらくなり(図2)、見えにくく感じたり、光が散乱してまぶしく感じたりします。

 

 

 

 

 

白内障治療について

白内障の治療は現在のところ外科的手術だけです。白内障に対して点眼薬を処方することはありますが、進行をやや遅らせる程度の効果しかなく、水晶体が決して透明に戻るという訳ではありません。

 

現在の一般的な手術方法ですが、まず点眼などの 局所麻酔を行い、顕微鏡を使用してわずか数ミリの傷口から水晶体の混濁を超音波で細かく砕いて取り除き、最後に眼内レンズ(図3)を移植するという方法です。手術後の痛みは通常あってもわずかで、手術翌日からすぐに見やすくなることが多く、社会復帰も早い手術です。手術の安全性も非常に高いと言われていますが、稀に合併症が起こる可能性もあります。また他の病気がある場合など目の状態によっては手術後の見え方には個人差があります。

 

移植する眼内レンズについては近年、新しいものが次々と登場しています。角膜(くろめ)の歪み、すなわち乱視を減らすことができる「乱視矯正眼内レンズ」や、「多焦点眼内レンズ」といってピントが色々な 距離に合うことで眼鏡がいらない、または眼鏡の使用頻度を減らすことが期待できる眼内レンズなど、高機能のレンズが徐々に普及しています。白内障という病気は今や治ることは前提になってきており、さらに高機能なレンズを選択することによってQOL(Quality Of Life)の向上を目指すような時代へと変わってきているとも言えるでしょう。

 

 

単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの特徴

眼内レンズの分類には単焦点と多焦点というものがあります。単焦点は文字通り焦点が単一のもの、すなわちピントが合う距離が一定になっている眼内レンズで、多焦点はピントが複数に合う眼内レンズと言えます(図4)。  

単焦点眼内レンズの場合、遠くにピントが合う度数のレンズを選択すると遠くは眼鏡なしでピントが合いますが、近くはピントが合いにくいため一般的には眼鏡を使用する必要があります。

 

※多焦点眼内レンズの注意点

多焦点眼内レンズは白内障手術適応の患者さんすべてに適している訳ではありません。そのため当院で適応検査を施行した上で最終的に手術適応の有無を判断します。例えば85歳以上の高齢者、手術に対する理解に乏しい方、角膜不正乱視が強い方、他の眼疾患のある方、過度に理想が高かったり神経質な方、職業ドライバーの方などは多焦点の適応外となる可能性があります。

 

 

多焦点眼内レンズと選定療養について

多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は、2020年4月から選定療養という枠組みで行えるようになりました。

 

手術費用は通常の単焦点眼内レンズを用いた白内障手術と同様に保険適応ですが、多焦点眼内レンズ代や手術適応を判断するために必要な追加検査の費用は自己負担となります(下図)。

2020年3月までは手術費用も自己負担額の一部となっていたため、この選定療養という制度によって患者さんに実際にお支払いただく費用は軽減されています。また選定療養は厚労省より眼鏡装用率の軽減効果があると認められた多焦点眼内レンズが挿入された場合のみ、その対象となります。

 

患者さんの自己負担額については角膜形状解析などの多焦点眼内レンズを用いた白内障手術に必要な追加検査の費用と、多焦点眼内レンズを選択することによって増える眼内レンズ代の差額の合計となります。多焦点眼内レンズ代は使用する眼内レンズの種類によって金額が様々で、当院も含め各施設により金額が異なります。

 

 

 

多焦点眼内レンズ費用について

多焦点眼内レンズを使用した白内障手術を当院で受けていただく場合、選定療養の費用として通常の医療費とは別に以下の金額をご負担いただきます。

 

多焦点眼内レンズの種類について

・2焦点レンズ:遠方も近方(眼前30~40cm)も裸眼で見ることが可能。

・焦点深度拡張型:遠方から中間(眼前50~60cm)は裸眼で見ることが可能。近方はやや弱めだが単焦点に近いクリアな見え方。

・連続焦点:遠方から近方(眼前40cm程度)を連続焦点で裸眼でピントを合わせることが可能。

・3焦点レンズ:遠方・中間・近方(眼前40cm程度)は裸眼でピントを合わせることが可能。

 

多焦点眼内レンズ金額
(片眼・税込)
2焦点レンズ[テクニスマルチフォーカル]

乱視
なし

¥157,000
焦点深度拡張型[テクニスシンフォニー]

乱視
なし

¥186,000

乱視
あり

¥208,000
連続焦点(2焦点+焦点深度拡張型)[テクニスシナジー]

乱視
なし

¥229,000

乱視
あり

¥262,000
3焦点レンズ[Clareon PanOptix]

乱視
なし

¥230,000

乱視
あり

¥252,000
3焦点レンズ[アクリソフIQ PanOptix

乱視
なし

¥230,000
乱視
あり
¥252,000

3焦点レンズ[クラリオン PanOptix トリフォーカル AutonoMe

乱視
なし
¥230,000
乱視
あり
¥252,000

3焦点レンズ[クラリオン Vivity Extended Vision

乱視
なし
¥230,000

※2023年9月22日更新