診療科・部門

肝・胆・膵疾患

胆のう

胆石症に対する腹腔鏡下胆のう摘出術は、完全に標準手術として確立されています。
当院では胆石症に対する腹腔鏡下手術は4~5日間の入院治療とし、年間100例以上の手術を行っています。
また、急性胆のう炎に対しても、中等症以上の症例や、軽症でも初期治療に反応しない場合には緊急手術として腹腔鏡下胆のう摘出術を行っています。お腹の傷は症例に応じて1~4箇所で行います。現在、胆のう摘出術では腹腔鏡下から開腹手術への移行率は数%で、ほとんどの症例で腹腔鏡下手術の完遂が可能となっています。

 

総胆管結石を伴う症例では、経口内視鏡による総胆管結石除去(EST)を行った後、腹腔鏡下胆のう摘出術を行うことを第1選択としています。胆のうポリープなどの隆起性病変で、胆のうがんの可能性が低いものは腹腔鏡下胆のう摘出術の良い適応と考えています。
また、胆のう摘出後に病理診断で胆のうがんと診断された症例でも、早期の粘膜がんと診断された症例は追加切除なく腹腔鏡下手術のみで全例無再発生存中です。

 

 

 

肝臓

腹腔鏡下肝切除は、まさに腹腔鏡下手術器具(特にエネルギーデバイス)の進歩により可能になった手術です。
腹腔鏡下手術の際、視野を確保するために炭酸ガスを腹腔内に注入(気腹)しますが、その腹腔圧により肝実質切離に伴う出血が抑えられ、最新のエネルギーデバイスを用いて肝切離を行うとほとんど出血せずに手術をすすめることができます。

 

大きな開腹創が必要な肝切除を腹腔鏡下に行うことは、患者さんにとっては大変大きなメリットがあります。
2010年4月から、腹腔鏡下肝切除が条件つきですが保険適応になったことからも、この手術の有用性が広く認められたことを示しています。
しかし、肝切除は、万が一大血管を損傷すれば大量出血となる危険性もあり、安全に手術を行うために手術適応には慎重さが必要です。

 

 

膵臓

膵臓では、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や低悪性度の神経内分泌腫瘍(NET)、漿液性のう胞腺腫など良性~低悪性度の膵腫瘍で、膵体尾部に存在する場合に腹腔鏡下膵切除術の適応としています。
開腹手術と同様に、脾臓の温存が可能な場合には脾臓温存手術も行っています。

 

一方、通常型の膵がんなど高悪性度腫瘍に対しては、腫瘍学的な見地から腹腔鏡下手術の有用性が明らかになっていないため、現在のところは適応外としています。

 

 

脾臓

特発性血小板減少症(ITP)など通常のサイズの脾臓の摘出は、腹腔鏡下手術の良い適応で、以前より多くの施設で行われています。しかし、このような疾患は比較的まれで、実際に患者さんの多い門脈圧亢進症を伴う巨脾の摘出手術は、腹腔鏡下手術の適応外としている施設が多いと思います。
当院ではこのような巨脾に対しても腹腔鏡下手術を積極的に取り入れております。手術侵襲の少ない腹腔鏡下脾臓摘出術は二次治療に速やかに移行できるため、患者さんにとって大きなメリットがあります。